金融機関からお金を借りるメリットとデメリットを考えてみた。

中小企業の資金調達における『お金の出し手』と『調達形態』として考えられるのは、実質的に以下に限定されます。

  • 金融機関      × 借入
  • 経営者・親族・知人 × 借入
  • 経営者・親族・知人 × 出資

(金融機関には、メガバンク、地方銀行、信用組合、信用金庫、政府系金融機関、ノンバンクを含みます)

 

この中で一般的な資金調達手段は、やはり『金融機関×借入』になります。

そこで、金融機関からお金を借りるメリットとデメリットをあらためて考えてみました。

 

金融機関からの資金調達を考えている方の参考になれば幸いです。

 

メリット

所有権・経営権は握られない

これは出資と比較してのメリットとなりますが、金融機関からの借入はあくまで負債のため、株主となり会社の所有権・経営権を握られることはないです。

 

出資よる資金調達の場合には、(出資比率等にもよりますが)資金の出し手は会社の所有者の一人となるため、経営に口を出す権利を持ちます。

ときには経営者の経営方針に口を出してくることもあり、経営の自由度が制限される可能性もあります。

 

この点、借入は、基本的にはそのようなことはないです。

ただし、借入比率が高い場合(多額の借入に依存して経営している場合)、業績が悪い場合等においては、金融機関も経営に口を出してくる可能性はあります。

口を出してくるのみならず、重要事項を決定するに際しては、金融機関の意見を聞かなければならなくなるケースもあります。

 

例えば、業績が悪化しているにも関わらず、追加資金を調達して新規出店を加速させる方針をとろうとすると、『既存店の改善が終わってから新規出店したほうがよい』等の指摘を金融機関がしてくる可能性もあります。

 

過去の決算書が悪くなれば借りられる

基本的には過去の決算書の内容がよければ、金融機関からお金を借りることができる可能性が高いです。

金融機関は、貸したお金が将来きちんと返ってくる、という点についての疑念が解消または薄くなれば、お金を貸す可能性が高まります。

 

では、どうやって、『貸したお金が将来きちんと返ってくる』ことを確認するのかというと、それは過去の決算書をみて、返済能力を確認します。

過去の決算書では、毎期この程度の返済原資を獲得しているので、今後も同じ経営環境が継続すれば、同程度の返済原資を獲得することは可能だとう、と金融機関は推測して、お金を貸します。

 

金融機関とよい関係が構築できれば、金融機関をうまく利用できる

はじめは少ない金額から金融機関取引をスタートし、借入・返済を繰り替えすことにより、会社と金融機関との間に信頼関係が構築されます。

確実な返済実績を積むことにより、信頼関係も強くなり、徐々に、借入の金額を高く設定することが可能となります。

会社の急な資金ニーズにも金融機関は柔軟に対応してくれるようになります。

 

ある金融機関1行と融資取引し実績を積むことにより、他行も安心してお付き合いできると考えます。

金融機関は皆様の想像以上に、横並び意識が強く、他行がどのような取引をしているのか、他行がどのような姿勢なのかを意識しています。

『あの銀行が取引しているなら大丈夫』と思うのです。

 

また、金融機関は多様な情報やネットワークを持っているので、資金調達以外でも金融機関を利用することができます。

例えば、新規の取引先を紹介して欲しい、ビジネスマッチングをしたい、経営改善の専門家を紹介して欲しい等、様々な面で金融機関を利用することで、会社を成長させることも可能となります。

 

デメリット

返済する必要がある

当然ですが、借りたお金は返さなければなりません、借入は返済義務があります。

返済方法には、均等返済、期日一括返済等があり、期限までに返済資金を用意しておく必要があります。

逆に金融機関は、回収を通じて会社の誠実性や返済能力等を把握していきます。

 

返済はデメリットでもありますが、当然の義務ですので、金融機関との信頼関係構築のための実績作りと捉えることもできます。

 

この点、出資は基本的に返済義務がないですが、株主に対して資金回収の何らかの出口を用意しておく必要もあります。

 

将来よりも過去、計画よりも実績を重視した審査がある

金融機関からお金を借りるためには、金融機関内部の審査をとおる必要があります。

上記メリットでも記載しましたが、決算書等の資料を提出し、金融機関は貸したお金が将来返ってくるのかを検討します。

 

金融機関が貸したお金が将来返ってくると判断した場合のみ、お金を借りることができます。

その金融機関審査では、会社の過去の財政状態、経営成績、キャッシュフローの状況の実績を中心に分析します。

過去がよければ、大きな経営環境の変化がない限り、今後も安心だ、という理屈です。

 

過去実績が悪い状況で、バラ色の計画を作り、『将来はこんなによくなります、こんなに返済原資を獲得するので、お金を貸してください』と言っても、なかなか難しいのが現実です

計画の実現可能性を証明するための実績が必要となります。

ただし、100%過去実績数値に依存しているのかというと、そうではなく、経営者、経営資源、外部環境等を総合的に判断して審査を実施します。

 

モニタリング対象となる

金融機関からお金を借りことにより、会社と金融機関は、債務者と債権者の関係となり、会社は金融機関の監視下に置かれます。

金融機関は、貸したお金が将来確実に返ってくるように、継続的・定期的に会社と接触し、会社の状況をヒアリングします。

ヒアリングのみならず、試算表、資金繰り表、決算書等の提出を求めてきます。

 

業績が安定、好調であり、約定通りの返済がなされていると、次の融資機会等も提案してきます。

しかし、業績が悪化すると、態度が回収モードに急変し、1 円でも多く回収できるように行動します。

 

金融機関は、融資先である会社をモニタリング対象とし、経営状況の変化を一早く把握できるようにしています。

 

この点については、金融機関主導でヒアリングや資料提出をするのではなく、むしろ、金融機関に対するよいアピール機会と捉え、会社自ら状況説明、資料提示等を積極的に行うことで、よい信頼関係構築が可能となります。

 

連帯保証や担保を求められる可能性もある

金融機関は、貸したお金が万が一貸倒れた場合に、損失を最小限にとどめる為、経営者等に連帯保証を求めたり、不動産に担保権設定等を要求してくるケースもあります。

会社が返済できない場合に、会社に代わって、経営者個人や不動産売却により貸したお金を回収しようということです。

 

しかし、最近では、事業性評価による融資や『経営者保証に関するガイドライン』にもあるように、連帯保証や担保を求めない融資が推進されおり、金融機関との交渉により連帯保証や担保なしでの融資を検討することも可能な環境といえます。

 

まとめ

金融機関からお金を借りるデメリットについては、お金を借りる債務者としては当然の義務とも考えられ、そのデメリットをうまく利用することにより、メリットに変えて、金融機関との信頼関係を構築することが可能となります。

 

信頼関係が構築できれば、お金以外の様々な場面で金融機関を利用することが可能となり、それは自社にとってもプラスとなることばかりです。

金融機関からの資金調達を臆することなく活用し、自社の持続的成長を実現させましょう!!

 

 

最後までお付き合い頂きありがとうございました。