いくつの金融機関と融資取引をするのがよいのか? 複数行との取引の勧め
歴史のある会社に限って、なんとなく1行取引が多いような、1行取引にコダワリを持っておられるように感じます。
金融機関は『お金の仕入先』、私は1行取引ではなく、複数行取引をお勧めしています。
はじめに
先日、「金融機関との関係をよくして金利を下げたい」とのご相談を受けました。
話しを聞いてみると、その会社が取引しているのは1行だけ、いわゆる「1行取引」です。
1行取引である理由を聞いてみると。
「創業時よりお世話になっているので」とのことでした。
確かに、創業時から取引をしていれば、信頼関係もそれなりに構築できているかもしれません。
万が一、会社の業績が悪くなった時に、力になってくれるかもしれません。
よい担当者に巡り合うことで一生のお付き合いができることもあります。
ただし、必ずしもそうではない場合もあると私は考えています。
そのような銀行、よい担当者に巡り会う確率は少ないです。
一般的には、支店の行員は数年(3年程度)で交代しますので(他の支店等の配属となる)、銀行とは表面だけのお付き合いになりがちです。
万が一の場合も、資金を出しにくいのが通常です。
ではどうすればよいのか?
一つの対応策としては、1行取引ではなく、複数行取引にすることです、2行以上の銀行とお付き合いすることを勧めています。
事前に選択肢を広げておく
1行取引の場合、設備投資、運転資金、資金繰りの悪化等の理由から、お金が必要な時に、取引している1行からの融資を断られたら、すぐに他行からの資金調達は難しいのが現実です。
例え、会社の業績が悪くなくても、新たな銀行から新規に資金を調達するには時間がかかります。
業績が多少なりとも悪いと、なおさらです。
設備投資であっても、銀行は事業計画を精緻に検証しますので、慎重に判断し、時間を要します。
その待っている時間の間に、事業機会を逃してしまうかもしれません、改善の一手を打つことができずに、業績がさらに悪化するかもしれません。
複数行と取引をしているなら、1行に断られても、他行に相談することができます。
銀行は、新規の会社よりも、これまで融資・返済実績のある会社の方が融資をしやすいという特徴があります。
会社の正常時に、創業からお付き合いをしている銀行以外の他行との取引を開始し、融資・返済実績を作っておくのが理想です。
正常時は、お金の心配も少ないので、1行取引で十分であるということは理解したうえで、異常時等のことも考えて、今のうちから複数行との取引をしておくべきです。
新たな銀行との新規取引は、会社の異常時よりも、正常時の方が圧倒的に楽です。
会社にお金が必要になった時に、新たな銀行に相談に行くと、その銀行は、「なぜ今ある銀行からお金を借りないのか」、「断られたのだろうか」等と余計な心配をして、対応がより慎重なります。
これが正常時だと、そのような不安を抱かせることもなく、比較的スムーズに取引を開始することができます。
取引銀行間の競争
銀行が扱っている商品は「お金」、会社はこの「お金」を「金利」を支払うことにより借りています。
つまり銀行は、「お金の仕入先」と考えることができます。
「お金」はどこで借りても「1円は1円」、どこで借りても同じです。
同じものであるならば、より条件が良い方から借りるべきであり、そうするためには比較対象、競わせる相手が必要になります。
1行取引では、比較対象、競わせる相手がいないため、そこが提示している条件が良いのか悪いのか判断することができないです。
このため、1行取引ではなく、複数行取引、最低でも2行以上の取引をお勧めしています。
これは「お金」以外だと普通にやっていることだと思います。
例えば、私が先日買ったBOSE QC35も、ネットを利用して安いお店で買いました。
どこで買ってもモノが同じなら、複数を比較してよりよい条件の方から購入するのは、当たり前の経済原理に基づく行動です。
ただそれが「お金」となると、途端に声が小さくなります。
お金を借りるうしろめたさからなのか、借りる方が弱いと自ら感じているからなのか、その理由は不明ですが。
銀行も、会社が他行とも取引していること知ると、他行を強く意識してきます。
他行がどのような動きをしているのか、どのような条件を会社に提示しているのか等を知りたがります。
必ず、『●●銀行さんはどうしてますか』等と聞いてきます。
他行の契約書まで見せる必要はないですが(見せるべきではない)、(すこし過大に)口頭で他行の動き、条件等を伝え、競争心を(多少)あおるのがよいです。
何行と取引するのがよいのか
これはその時々の状況によるため、一概に定義することはできないですが、このような質問を私が受けた場合、いつも以下のように回答します。
『その時々の状況により異なりますが、一般的には、調達している借入残高を目安にして、創業時は1行からスタートし、軌道にのった数か月後に他行から運転資金を調達し、借入総額が5千万円程度なら2行以上、1億円以内で最低3行、1億円を超えてくると最低4行以上とはお付き合いしたいですね』と。
あくまでなんとなくの肌感覚でお伝えしています。
まとめ
ビジネスの世界においても、『お金』の話しをすることはとても大事なことです。
『お金』以外の仕入においては、仕入金額が大きくなると、必ず相見積りをとるのに、『お金』について相見積りをとらない理由はないです。
銀行は『お金の仕入先』、1行取引ではなく、複数行取引をお勧めします。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。