どの金融機関とお付き合いするかの前に、金融機関の種類をきちんと理解していますか?
創業して初めて金融機関からお金を借りるときは、どの金融機関からお金を借りるのがよいのか、どの金融機関に相談に行くのがよいのか等を悩む経営者もいると思います。
よく、『創業直後に貸してくれるのは日本政策金融公庫しかないでしょ』なんて、他の経営者等から聞いているかもしれないですが、借りるのは自分(の会社)、正しい知識を持ってどの金融機関からお金を借りるのかを決めたいものです。
金融機関によって、融資の種類も異なるため、金融機関や融資の種類を理解することによって、創業直後はどの金融機関のどの融資が借りやすいのかがみえてきます。
本日は、まず、どのような種類の金融機関が存在し、その主な特徴を紹介してきます。
『〇〇銀行、××信用金庫、△△信用組合』、どの金融機関とお付き合いしていけばよいのかを考えている経営者等の参考になれば幸いです。
金融機関の種類
金融機関の種類を大きく分けると、以下のように分類できます。
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民間金融機関
- メガバンク
- 地方銀行(第一地銀、第二地銀)
- 信用金庫
- 信用組合
- ノンバンク
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政府系金融機関
- 日本政策金融公庫
- 商工組合中央金庫
あくまでイメージですが、創業して徐々に企業規模が大きくなるにつれて、お付き合いする金融機関は、政府系金融機関→信用組合・信用金庫→地方銀行→メガバンク、というような感じに推移していきます。
創業直後でビジネスの実績も借入の実績もないのに、いきなりメガバンクに行き、『創業したので設備投資資金を貸してください』と言っても、相手にしてもらえないでしょう。
ものには順序があるように、金融機関を選ぶ際にも順序があります。
メガバンク
メガバンクは、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行です。
コーポレートカラーで言えば、『赤』『青』『緑』ですね。
幾多の合併と再編を繰り返し、国内のメガバンクは3行に集約されました。
- 三菱東京UFJ銀行:東京三菱銀行(東京銀行+三菱銀行)+UFJ銀行(三和銀行+東海銀行)
- みずほ銀行:第一勧業銀行+富士銀行+日本興行銀行
- 三井住友銀行:さくら銀行(三井銀行+太陽神戸銀行)+住友銀行
こうして生い立ちをみてみると、なんとなく特徴というか、風土というか、カラーというか、分かるような気がしますよね。
あくまで私の勝手なイメージですが、
三菱東京UFJ銀行
- 三菱からの財閥系、安定
- 東京銀行からの海外
みずほ銀行
- 第一勧銀からの宝くじ
- かなり社風が異なる合併だったこともあり、システム障害が多発
三井住友銀行
- 三井、住友からの財閥系
- 老舗銀行
すでに現在の形になってかなりの年数が経過しているので、さすがに合併前の風土が色濃く残っているといこうとはないでしょうが、やはり多少はあるかなと想像してしまいます。
なぜなら、私の元勤務先の大手監査法人も、メガバンクと同じように合併再編を繰り返して、国内3強の監査法人にまで成長してきました。
いまだに、合併前の監査法人、会計事務所の風土は残っており、部署によっては、『あそこは元〇〇監査法人だから、ああいう風土があるよ』とか言われたりもしていました。
まぁ、もともと個人の会計士が生い立ちの監査法人よりは、会社が生い立ちの銀行の方が、旧態依然とした悪い風土は解消されそうな気しますが。
話がズレてしまいましたが、メガバンクはどちらかというと、比較的大手企業を対象にしている銀行といえます。
カネ余り、借り手優位のこの時代だからこそ、メガバンクでさえも地方にでて、地方銀行の領域を荒らしているなんてことも聞きますが、基本的なスタンスは、上場企業、最低でも売上高10億以上の会社を対象にするような銀行だと思います。
ですので、創業直後は、メガバンクに相談に行くよりも、メガバンク以外に行くのがよいと思います。
ただ、条件面では、地方銀行等が出せないような好条件を出してくることもあるので、一度声ぐらいかけてみるのもよいかもしれません(本命の競合相手として)。
融資取引は別にして、早いうちから関係性を構築しておくのはよいことだと思います。
地方銀行
正確には、地方銀行には、第二地方銀行は含めれないかもしれませんが、ここでは、いわゆる第一地銀と第二地銀をまとめて地方銀行と呼びます。
第一地方銀行は、全国地方銀行協会の会員である銀行です。
第二地方銀行は、第二地方銀行協会の会員である銀行です。
この両行は生い立ちが異なるため、現在でも区別されて呼ばれることもあります。
第一地方銀行は、昔から株式会社の形態で銀行を営んできたのに対して、第二地方銀行は、その昔は相互銀行という名称で平成元年の法改正で株式会社となりました。
ですので、イメージですが、第一地方銀行は地元の大きな企業を対象、第二地方銀行は地元の小さな企業を対象、のような感じです。
第一地方銀行
全国地方銀行協会HPによると、2017年3月末時点での第一地方銀行の数は64行だそうです。
HPをみるとなんとなく第一地方銀行のイメージがわいてくると思うのですが、キーワードを拾うと、
- 地方創生
- 地域金融の担い手
- 地域経済の活性化、持続的な成長
- 地域密着型金融
- 事業性評価に基づいた提案力
- 創業、成長、事業承継などのライフステージに応じた適切な資金供給
みえてくるのは、『地元企業を支援→地域活性化→第一地方銀行の維持、成長』という好循環を作りだすために、地元に根ざした事業活動をしていることだと思います。
メガバンクとは異なり、場合によっては創業時から支援してくれるケースもありますので、売上規模にこだわらずに、地元の第一地方銀行に相談に行けると思います。
基本的には、銀行側が担当者をつけてくれて、銀行での対応のみならず、融資先に定期的に訪問したりもします。
なんとなくのイメージですが、売上高10億以下の会社を対象にしているような感じです。それ以上大きくなると、メガバンクも攻めてきますので。
第二地方銀行
第二地方銀行協会HPによると、第二地方銀行の数は41行でした(2018年3月29日現在のHP掲載数)。
基本的なスタンスは、第一地方銀行と同じと考えてよいと思います。
借り手としては、特に第一地方銀行か第二地方銀行なのか等を意識することはなく、融資の相談に行くのがよいと思います。
信用金庫、信用組合
信用金庫と信用組合を合わせて、『信金信組』なんて呼びますが、この2つは似ているようで異なります。
主な共通点としては、
- 地域の相互扶助を目的とした共同組織
- 利益第一主義ではなく、地域社会の利益優先
- 営業地域は一定の地域に限定
- 業務範囲(預金・貸出)は、基本的には会員・組合員(地域の個人や会社)のみが対象
主な相違点としは、
- 根拠法が違う(信用金庫は信用金庫法、信用組合は協金法)
- 会員と組合員の資格要件が異なる
- 預金受入は、信用組合は組合員のみが対象
地方銀行がさらに商圏を一定地域に限定して事業活動をしていると理解すればよいと思います。
より地元に根ざした事業を展開しています。
先日、こんなことがありました。
駅前の信用金庫に、任意団体の口座開設に行くと、行員に任意団体の事務所住所を聞かれたので、応えると、地図を広げ、『そこが住所ですと、〇〇駅前支店ではなく、××駅前支店の地域になりますから、ここ〇〇駅前支店では口座開設できません、××駅前支店に行ってください』と。
メガバンクや地方銀行だとこのようなことってないですよね。
このことからも、信用金庫は支店によって、エリアを定めていて、そこに絞ったより細かいサービスを提供していると言えます。
信金信組については、地方銀行と同列で扱うというよりも、主軸を地方銀行に置きつつ、補助的に信金信組を使うのがよいと思います。
信金信組も地元に根ざしているというものの、情報は地方銀行のあると思います。
政府系金融機関
政府系金融機関としては以下の2行があります。
- 日本政策金融公庫(国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業)
- 商工組合中央金庫
日本政策金融公庫は2008年に、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国際協力銀行が統合された経緯から、基本的には3つの事業に区分されています。
日本政策金融公庫は株式会社ではありますが、国が株式の100%を保有しています。
政府系金融機関のうち、特に中小企業の利用機会が多いのは、日本政策金融公庫の国民生活事業だと思います。
創業融資についても、よくあるパターンでは、日本政策金融公庫 or 制度融資 or 信用保証協会保証付融資、を比較検討します。
日本政策金融公庫の融資金額には限度額があるため、企業が融資を多くうけられるようにするためには、あくまで民間銀行の補完という位置づけで利用するのがよいと思います。
地方銀行と比べると、支店の数も少ないので、地域に根ざしたサポート等も期待することはできないです。
ノンバンク
『ノンバンク』、たまに聞く単語ですが、定義としては、『預金の受け入れをせずに、融資だけを行う業者』です。
具体的には、信販会社、消費者金融会社(個人向け、事業者向け)、クレジットカード会社等があります。
銀行との違いは、規制する法律が異なり、銀行は『銀行法』に規制されますが、ノンバンクは『貸金業法』に規制されます。
その違いにより、ノンバンクでは、「総量規制」というものがあり、融資できる限度額が規制されています。
ノンバンクについて語ると長くなるので、詳細はまた他の機会に紹介します。
一言でいうと、『安易にノンバンクを利用すべきではない』、とうことです。
ノンバンクを利用するメリットもありますが、デメリットの方が大きいかなと個人的には思います。
まとめ
『金融機関』と一言でいっても色々ありますよね。
借りる『お金』はどの金融機関でも同じですが、金融機関にはそれぞれに特徴があって、どことお付き合いするかによって、(多少かもしれませんが)自社の成長に影響があると思います。
お付き合いをする金融機関については、『お金』以外の面も考慮して決めたいものですね。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。